2009/08/09

クライマーズ・ハイ

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テレビでやってたクライマーズ・ハイを観た。その感想。
寸評:☆☆☆★★(3/5)


  • 全体を観て――風呂敷広げてオチてない
話の展開はスピーディでテンポがいい。演出も気持ちがいい。役者の演技もいい。迫力のある映画で、気づいたら引き込まれていた。
この引き込まれ方は、いままで俺が観た邦画の中でもトップクラス。すばらしい演出だと思う。

でも、それだけ。
何回か言っているが、俺は「オチてない映画はダメ」と思ってる。そういう意味で、このクライマーズ・ハイはオチてない。
消化不良なんだよね、すべてが。テレビの編集が悪いせいだとしたら申し訳ないけど。
だってさー、序盤から味方と敵の描写が秀逸でわかりやすく、途中で味方の期待を裏切ってしまって反目しあう描写とか、敵側だった奴らが徐々に味方側にシフトしてくる様とか、もう本当に素晴らしい展開だったんだよ。
序盤、中盤がすばらしければ素晴らしいほど、オチてないときのガッカリ感は凄まじい。セブンエヴァに通ずるガッカリ感だ。

  • 尻すぼみするストーリー
以下ネタバレ含むけども。
犯罪まがいの取材で手に入れたスクープを、結局ビビって掲載させられなかったあのシーン周辺。あそこから急激に尻すぼみしていく。
主人公は「ダブルチェック」が身上であるため、確実に真実であることを確信してからでないと見出しとして打てない。結果として、その慎重さゆえに他社にネタを抜かれてしまう。
結局最後まで「このダブルチェックのおかげでウソ記事書かなくてすんだ」みたいなことは発生しない。つまり「ビビっちゃって他社に抜かれた」というだけで終わる。現実とは得てしてそういうものかもしれないが、映画で「あーあ、残念」で終わってしまって、それでいいのかよ、と。
もしくは「いや、この判断のせいでスクープは取れなかったけど、逆にこういう面でよかった」みたいな、そういう展開あってもいいんじゃないか。地元紙として中央紙よりもより充実の情報量、とか、遺族はより多くの情報を求めて地元紙を購入する、という伏線があるのだから、それを逆手にとって「隔壁うんぬんのネタは抜けなかったけど、代わりに載せたこのネタが遺族の間で感謝された」みたいな描写とかさ、そういうのが必要なんだと思うよ。いや、この例は陳腐だけどさ。「あーあ、残念」で終わるよりはいいんじゃないのか。
で、そんな陳腐な描写を入れなくても、たとえば「なぜあの見出しを打たなかったのか」という議論から社内の対立構造をより先鋭化していくという展開もあり得ただろう、というか俺はそれを望んでいた。

  • 社内ムードを激変させる、というテーマじゃなかったのか
物語の最序盤から、新聞社内の対立構造、閉塞感、退廃的社内ムードはテーマとして描かれている。そして俺はこのムードを主人公が払拭するというハッピーエンドのストーリーを期待した。
しかし最後まで社内のいざこざは引きずったまま、語られずに終了する。
そんなんでいいのか!? メインのテーマはこれじゃないのか?
他者にスクープを抜かれた後に、後追いで翌日に事故原因関連の記事をトップに持っていくことにする主人公。
次長「こんな記事、社長が許すわけないだろうが……」
局長「悠木は、きっとこの記事で社長と対決する気なんだよ」

という前フリがあり、いざ社長が編集部に入ってくると、
悠木「辞めます。本日はそのつもりで出社しました」
と言う。

それは対決とは言わねぇだろ、逃げてるだけじゃねぇか! ていうかそんなことで辞めるなら、過去いくらでも辞めるタイミングあっただろうが。
社長「こういうのは新聞とは言わない。塗り絵だ」
とまで言われているんだ。そこでハイソーデスカで辞めてどうする。なにが面白いんだそのストーリー。

映画の冒頭から部長、次長、社長は「大久保赤連の亡霊」と評され、簡単にいえば「頭の古い老害」と描写されている。
だったらその老害が偉そうなことを言ったら、逆に悠木の作った新聞が世間から評価され、老害どもが唖然として社内の発言力が弱まる、そこから社内ムードの改造が始まる、といったストーリーを期待して当然だろう。
クライマーズ・ハイ2でも作る気なのか?
後追いでもいいから日航で一面をと主張したのが悠木。遺族向けに無料で新聞を配ることを提案・実行したのも悠木。
だとしたら、その後は「遺族からの声を受け、上野村役場が北関東新聞配布量の増加を依頼」とかそういう形で世間の評判がいいということを展開していくべきなんじゃないのか。
そこから味方側の社員が結束して、すべて悠木の都合のいいようになっていくというのが王道なんじゃないのか。

旧態依然として日本の会社組織というものをブチ壊す、そういうテーマを期待しただけに俺のガッカリ感はより一層高まってしまった。

全体的な演出はものすっごく良かっただけに、ストーリーがヘタっているせいで楽しめなかった。残念である。

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